この作品は、2016年に公開されたオーストラリア・アメリカ・イギリス3ヵ国合作のノンフィクション映画で、日本では翌年の2017年に公開されました。
監督は、ガース・デイヴィス。
あらすじ(序盤のネタバレ含む)
物語は1986年。
インド中央部のスラム街で暮らす母と兄、弟2人と妹1人の5人家族がいました。
主人公・サルーはその中で育ちます。家族のこと、そして兄・クドゥのことも大好きな5歳の男の子。兄のクドゥもまだ幼いですが、貧困から児童労働をしています。
ある日、クドゥが働きに出ようとすると、サルーは着いて行きたがります。早く家族の力になりたいと願うサルーの熱意に負けて、クドゥは連れて行くことに。
列車が目的地に着くと夜。サルーは眠くなって駅のホームのベンチで眠ってしまったため、クドゥは「ここで待っていろ」と駅のホームでサルーと別れますが、サルーが目覚めると駅のホームは無人に。
兄を探して、ホームに停まっている列車に乗り込み、サルーはまた眠ってしまいます。
再び目が覚めると、その列車は動き出していました。回送列車のため止まることなく、2~3日ほど走り続け、サルーは降りることも出来ず、そのまま西ベンガルの州都カルカッタ(現在のコルカタ)まで連れて行かれてしまいます。やっと降車出来たサルーですが、今度は帰り方がわかりません。
5歳で言葉もままならない上、カルカッタではベンガル語、サルーはヒンディー語(※)しか話せません。同じインドでも言葉が異なるのです。言葉が通じないという不自由もあり、サルーは路頭に迷ってしまいます。正に迷子。また、都会は特にストリートチルドレンが多く、誘拐や人身売買など子供たちを脅かす問題は溢れています。サルーは毎晩その犯罪の魔の手から逃げ続けました。
運よく政府の施設に収容されますが、自宅へ帰りたいと願うサルーの気持ちとは裏腹に、オーストラリア人の夫婦のもとに引き取られることになります。
サルーは、そのままオーストラリアで夫婦の養子として成長し、25年の月日が流れました。経営学を学び、就職先も決まり、裕福な家庭と可愛い彼女。何不自由ないサルーでしたが、心の隅では幼い頃の記憶に残るインドの家族がいつも忘れられませんでした。 ある日、サルーは友人たちの何気ない勧めから、グーグルアースを使えば、故郷を探し出すことができるのではないかと考えます。
※インドでは、ヒンディー語やベンガル語以外にも22の公用語があると言われています。準公用語として英語を高等教育で教えてもいますが、充分な教育が得られないまま大人になった人も少なくなく、自分が話す言葉でも読み書きの出来ない人がいます。
「Google earth(グーグルアース)」とは?
Google earth(グーグルアース)とは、人工衛星を使って地球中の写真をインターネット上で閲覧することができるサービスのことで「世界で一番詳しい地球儀」としてグーグル社から2005年に開始しました。
自粛モードの多い現在も、このサービスを使って海外の写真を眺め、旅行気分に浸る人も多いようです。
主人公(幼少期)サルー役の サニー・パワール君が可愛すぎる!
幼少期のサルー役を演じたサニー・パワール君、この子めちゃくちゃ可愛いです‼
元々はムンバイの恵まれない子供たちが通う学校に通っていたサニー君ですが、製作スタッフの目に留まり、本作初の映画主演に大抜擢されました。
佇まいだけで演技をしている様な存在感と透き通るような瞳が特徴的といわれるサニー君は、撮影当時6歳。この映画では走るシーンが多いのですが、その走り方も小さい体で一生懸命なのがとても可愛いです。
監督のガース・デイヴィスも「観る者は、彼の物語と表情の虜になる」と太鼓判を押しているほどです。
また、兄・クドゥとの絡みも本当の兄弟みたいで微笑ましく、この兄・クドゥ役のアビシェーク・バラトとはこの映画の後にも再度共演しています。
主人公(青年期)サルー役は、「スラムドック$ミリオネア」のデーヴ・パテール‼
この映画で青年期を演じたデーブ・パテール(デヴ・パテル)は、インド人役が多いですが実際にはロンドン出身のインド系イギリス人。
2008年に『スラムドッグ$ミリオネア』で高い評価を得て、世界中で一躍有名になりました。そのほか『マリーゴールドホテルで会いましょう』や『奇蹟がくれた数式』『ホテルムンバイ』など数々の映画にも出演し活躍しています。
デーブは、この役をどうしてもやりたいという想いが強く、監督やプロデューサーたちに必死のアピールをしてオーディションのもとつかみ取ったのだそうです。
複雑な想いを抱える青年期のサルー役には、デーヴの生い立ちもあってこそリアリティを増した迫真の演技だったのではないでしょうか。
原作は『25年目の「ただいま」5歳で迷子になった僕と家族の物語』という書籍。
この映画は、史実に基づいたストーリー(ノンフィクションに近い映画)です。
物語の主人公であり実業家のサルー・ブライアリーが書いた本『25年目の「ただいま」5歳で迷子になった僕と家族の物語』が原作となっており、 彼の数奇な人生は当時世界中のニュースや新聞に取り上げられました。
日本のテレビ番組「奇蹟体験アンビリーバボー!」でも紹介されたことがあるようです。
実話と言うと、観る前からオチは想像がつきますが、それでもラストは意外性もあり楽しめる映画なのではないかと思います。
豪華キャストで固められた脇役たちも見逃せない‼
サルーの彼女・ルーシー役には『ドラゴン・タトゥーの女』のルーニー・マーラ。
サルーを引き取ったオーストラリアの両親、父親・ジョン役には『パイレーツ・オブ・カリビアン』などで知られるデヴィッド・ウェンハム。母親・スー役には、オスカー女優のニコール・キッドマンも出演しています。
オーストラリアの両親は幼いサルーの複雑な想いを汲み取り、少しずつ歩み寄ってくれる姿勢がとても素敵。実際のご両親もそうだったのでしょうね。
各賞を総ナメ‼
アカデミー賞では作品賞、助演男優賞、助演女優賞、脚色賞、撮影賞、作曲賞の6部門にノミネート。
英国アカデミー賞では、脚色賞を受賞。また、デーブ・パテールが助演男優賞を受賞しました。
オーストラリア映画協会賞では、作品賞を始めとする各賞を総ナメで受賞するなどの快挙を遂げました‼
映画自体は低予算で制作されたにも関わらず、予想を上回る興行成績も記録しました。凄いですよね!
美しい音色のサウンドトラック♪主題歌はSia(シーア)
この映画では、使用されている楽曲も魅力のひとつ。
インドやオーストラリアの雄大な景色をたっぷりと映し出し、その背景に美しいメロディが添えられています。残酷な現実を見守るかの様なその優しい旋律は、観ていて苦しい気分を和らげてくれます。
主題歌は、オーストラリア出身の歌手Sia(シーア)の「NEVER GIVE UP」♪♪
なぜタイトルが「ライオン」なのか。
作品のキャッチコピーは、
「迷った距離1万キロ、探した時間25年、道案内はGoogle earth」
この映画、最後の最後までじっくり観て、やっとタイトルの意味がわかります。
「あっ、そういうことだったのか!」と理解した瞬間、ブワッと溢れだす涙はきっと心地良い感動の証になるでしょう。
映画「LION/25年目のただいま」を観るならU-NEXT
映画もドラマも豊富なラインナップ♪
映画「LION/25年目のただいま」を観るなら